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窓を閉じて下さい | |
| 「天空の難破船」ネタ スパコミ無料配布ペーパー ※映画のネタバレ含みますので、未見の方はご注意を！ |
| いつも通り中森警部率いる警官隊の追跡を煙にまいて降り立ったビルの屋上に、怪盗は待ち伏せていた小さな探偵を見つけた。 「おや、名探偵。現場に見えなかったから、今日は来てないのかと思ったぜ？」 内心、逃走経路を読まれていたことに焦りつつ、快斗は父の教えのポーカーフェイスを守って余裕の発言をかましてみる。しかし、小さな探偵から返事はない。訝しんでいると、探偵は下を向いたまま、ずかずかと怪盗に近づいてきた。 探偵の様子のおかしさに快斗が戸惑い、次の行動を決めかねていると、探偵はキッドの真正面で立ち止まった。麻酔針を撃ち込める危険な距離だ。快斗の脳裏に警鐘が鳴る。だが、それ以上に探偵の様子が気になった。 小さな手が伸ばされ、キッドのネクタイを掴んだ。 「へ？」 そのまま、ぐいっと下に引き下ろされた。 「うおっ!?」 下ろされた快斗の目の前に、名探偵の顔があった。 今夜初めて見る探偵の瞳は、射殺しかねない凶悪さでキッドを睨んでいた。 殺 ら れ る その双眸の苛烈な輝きに目を奪われつつ、快斗は死を覚悟して、唾を飲み込んだ。 探偵が低く言った。 「…………をした？」 「え？」 「あの時、蘭に何をしたって、聞いているんだよ！」 「あの時？」 可愛く小首を傾げてみせたが、探偵には何の感銘ももたらさなかったようだ。殺気は少しも和らぐ事なく、名探偵は声を張り上げた。 「だから、飛行船のスカイデッキ！」 「あ、ああ〜…」 探偵の凄まじい殺気の原因に思い至り、快斗は納得の声を上げた。 先日の、鈴木次郎吉との飛行船での対決で、キッドはこの名探偵の大事な大事な幼なじみに正体を見抜かれた。とっさに工藤新一に変装してその場は乗り切ったが、その後の成り行きで彼女とキスまでできそうだった。が、さすがにハートを盗むのはともかく、女性の唇をだまして盗むのは、怪盗紳士の信条に悖る。相手がキッドと認識した上でのキスは大歓迎だが、可愛い彼女が見ているのはキッドではなく、工藤新一だ。女性の大切な恋心を踏みにじる事はできない。 なので、手っとり早く分かってもらう為に、工藤新一が絶対しなさそうな事をしてみた。 その柔らかなお尻を撫でれば、一発で彼女は怪盗キッドが工藤新一ではないと気がついた。男子高校生のくせに、これだけ可愛い幼なじみがいて、どんだけストイックなんだ、工藤新一と思ったものだった。 「おい、こら、聞いてんのか！」 小さくなった名探偵は容赦なく怪盗を責め立てる。快斗がどれほど紳士的に、乙女心を尊重したか分かっていない。 そういえば、この探偵には飛行船の時だけでなく、かなり貸しがあるはずだ。何度、彼の命を助けただろうか。特に今回は、犯人によって飛行船から落とされたのだ。キッドがいなければ、間違いなく死んでいただろう。 なのに、一言もお礼を言ってもらっていない。怪盗が探偵を助けるのは、当然だと思っているのだろうか。その信頼感は嬉しくもあり、淋しくもあった。探偵は、いつだって傍若無人だった。 探偵が何か怒鳴っている。快斗の気持ちなんてそっちの気で、ネクタイを掴み、探偵は容赦なく責め立てる。 「おい、キッド、答えろ！」 どこかで何かがぷちんと切れた音がした。 快斗は、ネクタイを掴んでいる探偵の手首を掴んだ。 「え？」 探偵が上げた戸惑い気味の小さな声に、何故か無性に煽られた。力任せに腕を引っ張れば、踏みとどまる事もできずに、探偵の小さな体は引き寄せられた。もう片方の手首を掴み、完全に動きを封じる。 「キ、キッド？」 自分で仕掛けておいて、相手の予想外の動きに今更困惑しても遅い。探偵は推理に関しては頭を使うが、自分の行動と幼なじみの彼女に関しては後先を考えていない。 頭の中身はともかく、外見は小学生で非力である自覚が名探偵は少し足りないと思う。足りない力を補う為に、様々な道具を使っているが、もっと本質的な意味で、名探偵は自分が子供の身体になっていると自覚すべきだ。何故なら、快斗が本気を出して力任せに捕まえれば、名探偵はもう動けない。 「こら、キッド、離せ」 無言で引き寄せ、喚いている探偵の小さな唇を、快斗は自分のそれで塞いだ。 「んんっ!?」 驚いている隙を逃さず、歯列を割って舌を滑り込ませる。その小さな甘い舌を絡めとり吸い上げ、口腔内を愛撫する。手首を離し、代わりに腕は腰と後頭部に回して、更にキスと抱擁から逃げられないように固定する。探偵の小さな身体はたやすく、快斗の腕の中に収まった。空いた名探偵の腕が拘束から逃れようと、キッドの肩を押したり叩いたり暴れているが、所詮は子供の力。高校生の快斗にとって、大した脅威にはならなかった。 「･･･っ･･･」 キスを続けていれば、明らかに経験はないだろう探偵の腕から抵抗する力が徐々に抜けていく。名探偵の唇を味わい尽くしてから、快斗は顔を離した。固定し支えていた手も離すと、子供になったおかげで更に耐性がないのか探偵の膝は抜けて、その場に座り込んでしまった。 「キッド、てめ･･･」 唇を拭いながら上気した頬と潤んだ瞳で睨まれても、怖くはない。むしろ、別の衝動がわき上がってくるが、それは辛うじて押しとどめた。この先はシャレにならない。 快斗はポーカーフェイス代わりの、戯けた笑顔を閃かせた。 「と、そーんな感じでキスしようと思ったんだけど、彼女にはあっさり振られちまって、未遂だよ」 「え？」 「安心したか、名探偵？」 「べ、別に」 毛利蘭には手を出していないと言えば、あからさまに名探偵は安堵の表情を浮かべた。怪盗の言葉をそんなにあっさり信じていいのか、とか、自分にされたキスは棚上げかよ、とか色々ツッコミたいところはあった。 「さて、それよりも」 ずいと快斗は、探偵の顔を覗き込んだ。突然のキスの後遺症か、近づいた距離に彼らしくなく小動物のように探偵がびくりと反応した。 「何だよ？」 「あの時の責任、取ってもらおうかな」 「あの時？」 「そ、あの時」 「って、いつの時だよ？」 「飛行船に戻った時」 「は？」 「忘れたのかよ。お前、あの時、オレの身体を触りまくっただろ」 「ああ、あれは仕方ないだろ。お前がさっさと翼をたたまねえのが悪い。だから、代わりにオレがスイッチを探してやったんじゃねえか」 「お前が邪魔だったんだから、それこそ仕方ねえだろ。なのに、お前はそれを口実に触りまくりやがって。泥棒の純情を返せ」 「何を言ってやがる。男の身体なんてノーカウントだろ」 小さな探偵が、悪びれもせずに開き直る。その調子で今のキスもノーカウントにされたら、ちょっと切ない。と快斗は内心思いつつ、そんな感情は表情には全く出さない。もう少し、名探偵と遊んでいたい気もするが、まだ中森警部の警戒は解かれていない。警視庁の哨戒ヘリの音が近づいてくる。そろそろ潮時だろう。 「ったく、あんな所まで触っておいて、知らんぷりはないだろ。ちゃんと責任取れよな」 「せ、責任？」 名探偵が驚いて、目を丸くする。そんな表情が見られれば、諸々の溜飲も下がるというものだ。 快斗は綺麗にウインクをして見せた。 「そ。ちゃんとオレの事、お婿にもらえよな、名探偵」 「ば、何をとち狂った事を言ってんだ、バーロー」 真っ赤になって腕を振り上げて名探偵が怒っているが、まだキスの余韻で座り込んだままなので、迫力はない。ただ可愛いだけである。 「じゃあな、名探偵。また大空デートしような、マイダーリン」 快斗は探偵に投げキッスを贈ってから、ビルから飛び降りる。一瞬にしてグライダーの帆を張り、夜風を捕まえる。 可愛い外見を裏切って、口汚くキッドを罵っている名探偵の声を楽しく聞き流し、快斗は夜空を滑空する。ハズレの宝石とは対照的に、今夜最大の収穫になった、名探偵の唇の柔らかさを反芻しながら。 (2010.05.04) |
| というわけで、「天空の難破船」ありがちネタでした。 映画は本当に素晴らしかった。キッドのかっこよさと可愛らしさが余す事なく堪能できた！ 対決どころか、怪盗と探偵はラブラブだったし。もう本当に、ご馳走様！ 勿論、江戸川もかっこよかった。後は、一日もはやくＤＶＤが出ることを祈るのみ！ そんな勢いで作った、スパコミ無料配布ペーパーでした（笑）。だから、タイトルはない！＜(￣＾￣)＞←えばんな |
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