コナン「クリスマスパーティ」

クリスマスパーティ

　鈴木財閥の恒例のクリスマスパーティ。人数は多いほど盛り上がるだろうということで、次女の鈴木園子の友人達も招かれていた。その一人として、工藤新一もパーティに参加していた。
　新一は壁に寄りかかり、ノンアルコールのカクテルグラスを傾けていた。
「よっす、新一君、楽しんでる？」
　パーティドレスの園子と蘭が連れだって近づいて来た。
「ああ、楽しんでいるぜ」
「その割には何か調子悪そうだけど、大丈夫、新一？」
　蘭が覗き込んでくる。
「そんなことねえよ」
「そう？」
「あー、ちょっと、人が多いだろ。それに酔ったのかもしれねえな。少し風に当たってくるよ」
　蘭は特に新一に関しては第六感に近い超感覚的に鋭い。新一は蘭の視線から逃れるように、バルコニーを指し示し、歩き出した。
「私も行こうか？」
「何言ってんだよ。一人で大丈夫だよ。おめえらはパーティ楽しめよ。折角の鈴木財閥のパーティなんだからよ。ほら、何か始まるみたいだぜ」
　鈴木財閥クリスマスパーティと大段幕が張られた壇上では、スタンドマイクの高さを調整していて、その横に鈴木次郎吉が立っている。
「あ、次郎吉おじさまの話が始まるわ。前の方に行きましょ、蘭。映像も流すみたいだから、かっこいいキッド様も見られると思うわ」
「あ、うん。じゃあ、新一、行くね。あんまり無理しないでね」
「おう、大丈夫だ。心配すんな」
　蘭と園子を笑顔で見送って、新一はバルコニーへ向かった。
　バルコニーには誰もいなかった。冬の夜風は冷たかったが、火照った身体にはちょうど良かった。
　人目から逃れて一人になれた事と冷気に、新一は熱く重い息を吐いた。

　どうして、こんな事になったのだろうか。
　発端は些細な売り言葉に買い言葉だった気がする。
　なのに、何故、こんな。

　パーティが始まってからずっと、新一の意識はそれに向けられていた。それは、ただ在るだけで新一を苛んだ。
「んっ」
　時折、質感が重くなるのは無意識に締め付けている所為だ。それは動いていない。ただそこに在る。新一はバルコニーの手すりを掴んだ。バルコニーには誰もいない。窓ガラスに仕切られ、パーティ会場の喧噪はバルコニーまで届かない。夜の静寂の中で、一人内側の感覚を持てあましている自分の姿は滑稽に思えた。
「･･･っ･･･」
　ガラスの扉が開く音がした。誰かがバルコニーに出てきたのだ。傍目には夜風に当たっているだけにしか見えない筈だ。新一は振り向かずに、何事もないように装う。
「大丈夫かい、新一君？」
　元凶が涼しい顔をして、声をかけてきた。
　肩越しに視線を投げると、そこには沖矢昴がいた。新一の家に居候していて、隣家の阿笠博士と仲が良かった関係で、新一と同じく園子からクリスマスパーティに招待をされていた。
　新一は昴を睨み付けた。
「誰の所為だと思っているんですか？」
「それは勿論、君の所為だよ、新一君」
「っ」
「負けず嫌いの君が意地を張ったから招いた事態だよ」
　確かに、その側面もある。まともに取り合わなければ良かっただけの話だが、面と向かって言われると腹が立つ。元々言い出したのは、確か昴の筈だ。
　ワイングラスを落ちないようにバルコニーの手すりに置いて、昴は背後から包み込むように新一に腕を回した。
「やめてください。人に見られる」
「大丈夫だよ。会場は、鈴木相談役の話で盛り上がっている。誰も、こんなバルコニーなんて気にしない。それに、ここは暗い。こうしてしまえば、僕に隠れて君の姿は見えないから、大丈夫だよ」
　昴の右手が新一の顎を捉え、人差し指が唇をなぞった。
「ちゃんと約束を守ってくれて、嬉しいよ」
　囁くように言葉が落とし込まれる。
「昴さん･･････」
「いい子だね、新一君」
「―――この、変態」
「褒め言葉だよ」
　昴の左手が自分のスーツのポケットに吸い込まれた。
「あっ」
　それが、動き出した。昴のポケットに遠隔装置のスイッチがあったのだ。
　会場では鈴木相談役の話が佳境に入っているらしく、盛り上がっている。対照的にバルコニーには新一と昴の二人しかいないから静かだ。だからこそ、本来聞き取るの事が出来ないだろう僅かなそれのモーター音が耳に届いた。いや、内側からの音か。どちらにしろ、新一は耐えるしかない。
「･･･あ･･･昴、さん･･････止めて･･･ください･･･」
「ほんの少し動かしただけで、もうギブアップかい？　動いていない今までで十分だったようだね。つまり、賭は僕の勝ちかな、新一君」
「ん･･･そんな･･･こと･･･より･･･早く･･･止め･･････」
「勝負は勝負だよ。負けを認めるかい？」
「っ」
　動きが強くなる。昴が操作している様子はない。ランダムに設定されているのか。
「･･････ぁ･･･」
　重く熱い息を吐いて、感覚を逃そうとするが、ずっと銜え込まされていた場所は鋭敏に刺激を拾ってしまう。
「昴さん･･･もう･･･」
「負けを認めるかい？」
　新一は決定的な言葉を口にすまいと唇を噛んだ。彼のプライドがそうさせた。しかし、それは蠢いて、新一のプライドを、思考を突き崩す。
「新一君、君の負けでいいかな？」
　再び甘い毒のような昴の囁きに耳を犯され、新一は小刻みに震えながら小さく頷いた。
「本当にいい子だね、新一君は。取って欲しいかい？」
　俯いたまま、新一は再度小さく頷く。
「僕は今日はお酒を飲むつもりだったから、始めからこのホテルに部屋を取ってあるんだ。そこに行こうか。トイレでは嫌だろう？」
「･･･それよりも･･･止めて･･･ください･･･」
「負けたらペナルティは付きものだ。部屋まではそのままだよ」
「そんな･･･」
「探偵のポーカーフェイスを見せてもらおうかな。その状態で会場から出ようか。歩けるだろう？　どちらにしろ、部屋に行くには会場を通るしかないしね」
　昴は普段と変わらない涼やかな笑顔で、悪魔のように囁いた。

（2011.12.25）

　なーんてねゞ(￣▽￣)
　ここまでなら、別に隠さなくても大丈夫でしょう。工藤さんがナニをされているかは、大人なお嬢さん方なら、きっと分かってくれると信じてる！
　快斗にはあんまりひどい事をして欲しくないなーと思って、こういう系は書いてなかったんですが、某イベントサイト様で、昴×新一の神イラストを拝見して、おお、すば新いいなー、てか昴さんなら元々持っていたエロネタ使えるじゃんて気づいた今年の春。あ、ちゃんと神イラストを描かれた神絵師さまに、イラストにあった科白の使用許可はいただいておりますんで。エロ話という説明はしておりますが、まさか、こんな話に使われるとは思っていないでしょうな。本当にすみません。きっと多くの方がごらんになっているだろう、神イラストに思い当たった方、イメージ壊してしまって、申し訳ないです。でも、やっちゃう＜(￣^￣)＞えへんぷい
　いつか言葉責めというか、S系エロのすば新コピー本を作りたいと思いつつ、時が経ちました（遠い目）。昴さんの正体が出る前にとにかく書かなきゃと思いつつ、サイトにあげるにはエロすぎて、どうしようかと思ったけど、導入部分なら問題ないじゃんとクリスマスエロにしてみました。この後の展開は、ただのエロですんで、まあ書かんでもいいかなと。普段のうちの工藤さんとはギャップがありすぎるな、きっと（苦笑）。
　腹黒系黒昴さんに翻弄される工藤さん萌え。この話のエロ部分とか、他のエロすば新はひっそりこっそり書きたい気もするけれど、自分の基準的には危険物なので、どうサイトに出すかな。それ以前に、快新がメインカプなので、これは需要なかろうなぁ。言い訳長くてすみません(￣‐￣；)

窓を閉じて下さい