星に願いを0

星に願いを
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「それが私の願いです」

　向かい側に座っている女性は、静かに言った。暖かな陽射しを受けて、凪いだ海のような表情で窓の外に顔を向け、その声は詠うようだった。
　工藤新一は手に持っていたカードをテーブルに戻しながら、無礼にならない程度に首を小さく振り、息を吐いた。

「それは、探偵の仕事ではありません」
「ええ、分かっております。でも、私には貴方に頼るしか術がありません」
「ですが、」
「お願いします。貴方の力が必要なのです」
「そう言われましても、」
「報酬は望みのままに」
「そういう問題ではありません」

　昼下がりの穏やかな風が、開いた窓辺のレースのカーテンを揺らしていく。自分の意思を曲げる気のない女性は、懇願の形を装いながら決して引く事なく、尚も言い募る。
「お願いです。私にはこうして頭を下げる事しかできません」
　気品に溢れた女性は瞳を閉じて、緩やかに澄んだ笑みを浮かべた。

「工藤さん、どうか、あの人に、怪盗キッドに」

　続く言葉に、新一は瞳を歪めて女性を見つめた。

（2007.12.30初出　2012.05.22再掲）

窓を閉じて下さい

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