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窓を閉じて下さい | |
| Brute 8 |
| 黒羽は先に階段を降りながら、工藤に脱出方法を提案した。 「奴らの狙いはオレだ。だから、二手に分かれよう。オレが奴らを引きつける」 「バーロー、そんなわけにいくか。お前が狙われているんだろ？ なら、オレが奴らを引きつけている間に、お前が逃げろ」 工藤は当然のごとく反対した。他人を囮にして自分が助かる方法など、この探偵が許容する筈もなかった。しかし、黒羽としても、今回の工藤は明らかに怪盗キッドのとばっちりを受けている状況である。工藤を囮にするなど、選択肢にもならない。ここは引く訳にはいかなかった。 得意の話術で何とか不満げな探偵を説き伏せて、二手に分かれる事を了承させる。無駄な押し問答で時間を浪費する訳にもいかなかった。 「じゃあ、オレが先に出るが、ちゃんと逃げろよ、名探偵」 「お前こそ、あんな奴らに捕まるんじゃねえぞ」 工藤の憎まれ口に笑みを返して、黒羽は組織の連中が包囲を完成させる前に、ビルの裏口から飛び出した。目立つようにこれ見よがしに白いマントをなびかせて、男達の間を駆け抜ける。 「怪盗キッドだ！」 つられるように、男達が追いかけてくる。その後にいつも続くのは「追え」だの「殺せ」だのいう独創性のない言葉だ。しかし、今夜聞こえてきたのは、違う科白だった。 「待て！ 奴にかまうな！」 リーダー格らしき男の声が飛ぶと、キッドを追いかけていた男達は一斉に足を止めた。 「もう一人を追え！ 今日はキッドにかまうな！」 その命令通り、その後キッドを追ってくる者はいなかった。男達は次々にビルの方向へと戻っていく。 「ちょっと待てよ、何だよ、それ！」 怪盗キッドと敵対する、不老不死の宝石パンドラを求める組織が狙っているのは、キッドではなく工藤新一なのか。 工藤の安全を優先して、自分に引きつける為に二手に分かれたのに、これでは逆効果だ。 黒羽は、逃走用に準備しておいたバイクのある駐車場に走り込んだ。周囲に視線がないのを素早く確認して、キッドの衣装から私服に戻る。黒羽は急いで来た道をバイクで取って返した。 （2008.03.16初出 2015.1.28再掲） |
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