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窓を閉じて下さい | |
| Hide-out 13 |
| 戸惑っている隙を狙われ、再び伸びてきた腕に抱き竦められ、本棚に身体を押し付けられた。キッドの足に強引に膝を割られ、首筋に噛みつかれるように唇を落とされる。ようやく、その意図を正確に理解して、新一の顔が青ざめる。反応を楽しむように、身体を離して新一の顔を覗き込んだ怪盗の笑みがますます深くなった。 「別に大声で助けを求めてもいいぜ？ 誰も聞く奴なんかいないからな」 「触んな、変態！」 必死になって怪盗の腕を振り払い、新一は部屋のドアを目指した。 「逃がさねえよ」 大した距離ではない筈なのに、ドアに辿り着く前に怪盗に腕を掴まれ、引き倒される。足元に積んであった本が崩れて、新一は足を取られてバランスを崩し、あっさりと床に組み伏せられた。 両手を床に押さえつけられた。蹴ろうにも、馬乗りに乗られて足の動きも封じられる。 「離せ、キッド！」 怪盗の身体の下でもがくが、拘束は外れない。 「お前が悪いんだ、名探偵。お前がこんな所まで来るから」 新一がこの場所に辿り着いた事と、これからキッドが自分に対して行おうとしている行為の因果関係が分からなかった。新一の混乱をよそに、キッドの体重が掛けられ、首筋に唇が落とされる。 混乱と恐怖と嫌悪に、新一は必死に抵抗したが、キッドはものともしなかった。それでも、片方の腕がキッドの手から逃れた機会を逃さなかった。空いた手で付けられている首輪を探り、力任せに引っ張った。 「痛っ」 首輪の逃走防止装置が作動して、新一の身体に電流が流れる。その痛撃に身体を重ねていた怪盗の身体が飛びのいた。明らかに自分の方がダメージが大きかったが、怪盗に押し倒されている不本意な状況を打破するためには他の選択肢がなかった。 電流の痛みに歯を喰いしばり、必死に新一は起き上がりうまく動かない身体を引きずり、床を這いずって少しでも怪盗から距離を取る。 そうまでして逃げる姿が相手の嗜虐心を煽る事になるなど、新一には思いもよらなかった。 「名探偵は、本当に手段を選ばねえなぁ。自分の方が痛い思いするだけじゃねえか」 「おとなしくお前の好きにされるよりはマシだ！」 床に這ったまま、新一は出来る限りの非難と抵抗を込めて、怪盗を睨みつけた。キッドはゆっくりと新一に近づき、立ち上がれない探偵の前に膝をついた。揶揄するように囁かれる。 「その瞳、誘ってるのか？」 頬に添えられた怪盗の手を、音を立てて弾いた。屈辱のあまり言葉も出ずに、新一は真っ赤になって怒りに身体を震わせた。 「そう怒るなよ」 怪盗のあの昏い瞳が新一を映した。 「こんな所にまで来たお前が悪いんだよ、名探偵」 吐き捨てるような科白に、新一の頭が冷える。その言葉を口にする時の怪盗に不敵さはない。 「どういう意味だ？」 「言葉通りの意味だよ」 追及を恐れるように、怪盗の手が乱暴に新一の首輪を引っ張った。 「っ痛」 再び身体に走った電流に呻いて、新一は上半身を支えられずに床に倒れこんだ。キッドも無傷ではいられず、電流の走った手を押さえて、顔を顰めている。 「何で、こんな事を･･･」 怪盗のらしくない行動に、動かない身体でせめて瞳に精一杯の非難をこめて、新一は新庄の顔を睨み付けた。 「怪盗キッドにはやる事がある。まだ捕まるわけにはいかねえんだ。だから、正体を知っちまった名探偵に口止めをするんだよ。殴られるよりも、こっちの方が人に言いたくはないだろう？」 伸ばされてくるキッドの手から逃れる術は、新一にはなかった。 13.5 （2007.03.18初出 2009.11.27再掲） |
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