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窓を閉じて下さい | |
| 星に願いを 4 |
| ＣＭ後も番組は台本通りに進んだ。 番組中に募集した、視聴者から怪盗や探偵にあてたファックスやＥメールが紹介され、司会者の巧みな話術もあり、番組は大いに盛り上がった。番組の最後に、司会者が工藤にマイクを向けた。 「じゃあ、工藤君、最後に一言、怪盗キッド確保に向けた意気込みをお願いします」 「では、」 小さく咳払いをして、工藤はマイクを受け取り、カメラを向いた。 「怪盗キッド、お前が何を考えてこんな予告状を出したか分からないが、中森警部も充分な準備をして警備に当たっている。予告を取り消すなら、今のうちだぞ。今回は、流石のお前も空から屋敷の中に入るのは不可能だ。例え、何とかして屋敷に侵入して宝石の元へ辿り着けたとしても、そこには僕がいる。神野さんにも宝石にも指一本触れさせないから、覚悟しておけ」 「おお、堂々の宣戦布告だね。工藤君、君、優しそうなのに、結構言う事が過激だねえ」 司会者が初めて聞いた風に、感心したように言う。この科白だって、予め台本で打ち合わせ済みなのに。と、工藤は別の事に感心しながら、言葉を継いだ。 「工藤家の家訓で、売られたケンカは逃げてはいけないというのがあるんです。そういえば、以前の事件のいくつかで、怪盗キッドもそういうところがありましたね。でも、今回はかなり彼に分が悪いと思います。賢い人間なら、犯行を諦めると思いますがね」 「そうかなぁ。僕の見たところ、彼はかなりの負けず嫌いだと思うね。案外、キッドと工藤君は二人とも似たもの同士だったりするのかねぇ。おっと、まだまだ話は尽きませんが、残念ながらお時間になってしまいました。じゃあ、工藤君、三日後の、君と怪盗キッドとの対決を楽しみにしているよ、頑張ってね。僕もその日は特番で、君の活躍を放送させてもらうから。期待しているよ。神野さんも長い時間ありがとうございました。宝石が無事に守られる事を、祈っていますよ」 「ありがとうございます」 エンディングの曲が流れる中で、神野は静かに頭を下げた。 慣れないテレビ番組が終わり、神野は荷物のある控え室に戻りながら、深く息を吐いた。隣を歩いていた工藤が小さく笑いながら声をかけてきた。 「疲れましたか？」 「ええ。さすがにちょっと。こういう番組に出るなんて初めてですから。それにしても、本当にあれで良かったのですか、工藤さん？」 「ええ。あれでいいんです」 「でも、」 「神野さん」 並んで歩きながら、少しだけ強い調子で、工藤は依頼人の名前を呼んだ。 「怪盗キッドは神出鬼没です。誰に変装して、何処で何を聞いているか分かりません。不用意な発言は避けて下さい」 「分かりました」 警戒する工藤に、神野はいささか顔を強張らせて頷いた。 （2007.12.30初出 2012.06.08再掲） |
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